科学と産業の情報ライブラリー「神奈川県立川崎図書館」のご紹介

川崎駅近くに、神奈川県立川崎図書館があります。川崎図書館は、昭和33年に設立された歴史ある図書館です。当時県立の図書館は横浜にありましたが、川崎にもという県民の要望により、この地に設立されました。京浜工業地帯の中心地である川崎に立地するため、「産業と科学技術」を重点的に扱う図書館となったのです。以前までは、川崎駅周辺に市の図書館がないこともあり、市の図書館を保管する役割を果たしていたそうですが、15年ほど前に、川崎市の図書館が設立されたこともあり、今は完全に「科学と産業」に特化した図書館になっています。

新着図書コーナー 専門書が並びます
新着図書コーナー 専門書が並びます

 

また、科学技術と産業といっても、「教養レベル」のものではなく本格的な図書を扱うことをコンセプトとしています。科学技術の専門書、専門雑誌、企業の技報などそうそうたる図書や雑誌が並んでいます。所蔵図書は、24万6千冊ほどあり、また、継続的に収集している雑誌タイトルは2400タイトルと、かなり充実しています。また、手にとってみられる開架式なため、気軽に利用することができます。収集の対象としては、図書分類の日本十進分類法の400番代(自然科学)、500番代(技術)、600番代(産業)となっています。お伺いした時にも、新着図書コーナーに『チタンの溶接技術』が、どーんと飾られていました(う~ん、確かに専門的です!)。最新刊はもちろんですが、古くから定番とされているような教科書的な本も充実しているため、む

                                 しろこちらの本を期待して来館される方もいらっしゃるようです。

中高生向けの科学本がびっしりです
中高生向けの科学本がびっしりです

 

さらに、平成17年より、ビジネス支援にも力を入れてらっしゃいます。そのため「仕事に役立つ図書館」とも言われており、図書館全体として自ずと企業の方の利用が多くなっています。

 

しかし、こうした企業の方向けだけでなく、「科学を伝える」といった観点から、「やさしい科学コーナー」もあります。科学の入門書的な本や、子ども向けの科学本なども充実しています。その数は1万冊と、こちらもかなり充実しています。高校で習う、物理、科学、生物、地理の分野はもちろん、産業というコーナーもあり「職業」をテーマにした本もあります。お伺いした当日も、女子中高生の集団が夏休みの宿題らしきものをやっていました!夏休みの自由研究ネタ探しや、調べ物にはもってこいのコーナーです。

川崎図書館HPより
川崎図書館HPより

 

 

さらに、やさしい科学のコーナーの延長として、「やさしい科学しんぶん」も発行されています。

 

テーマを決めて、それに関係するやさしいサイエンス本を紹介したり、関連施設の紹介などもしてある司書さんの力作です。最新版は「ゴム」に関するものです。

 

さらに、子供向けということで、夏休みには実験教室や科学映画の上映もやっています。

専門書フロアにある伝記コーナー
専門書フロアにある伝記コーナー

 

また、専門書や専門雑誌のコーナーにも伝記のコーナーがあったり(棚の上にはあえてむしろ知られていない科学者の紹介がしてあります)、雑誌の担当の司書さんが、雑誌の中から生活に関連して面白そうなトピックスをピックアップして紹介してくれる「雑誌で発見!」もまとめられており、専門的な知識を一般の人へと繋ぐ橋渡しをするという工夫もされています。

サイエンスカフェの様子 川崎図書館HPより
サイエンスカフェの様子 川崎図書館HPより

さらに、イベントとしては、「サイエンスカフェ」「サイエンスロマン」なども行なわれています。川崎図書館では、年間を通じて様々なイベントが行なわれており、その数は年に160以上ということで(すごい数です)、職員の方のご苦労、情熱が窺えます。これには、イベントなどを通して、図書館としても情報発信すべきであるというお考えがあるようです

サイエンスカフェは、一般の方にも最先端の技術を分かりやすく知ってもらうために開催されており、大学や企業などと連携して開催されています。テーマも「相模湾ってどんなところ?―市民参加型画像データベースの構築と魚類の多様性研究―」「リンパ球からiPS細胞をつくる!-免疫療法開発研究の最前線-」「キカイとカラダの意外な関係 -振動による骨再生、機械の知能化-」などかなり専門的です。

一方、サイエンスロマンは、最先端ではないが誰もがロマンを感じるような(例えば地層や化石から過去の様子を描き出す~連綿と繋がる地球の営みを感じながらなど)の講義をする場となっています。

 

公立の施設ながら、このように大学や企業も巻き込んだ形でイベントが実施されているのは、科学技術や産業図書館としての長い歴史の中で、地元の企業や大学とのネットワークがあるからです。川崎という場所の資源を活かして、大学や企業の中の資源を是非、私たち一般の者へ橋渡しをしていただけるような活動を今後も期待します!

 

※企業の方の協力を得て展示なども開催します。今は、ミニ展示「社史にみる企業キャラクター」です(懐かしいペコちゃんや、ケロよん、崎陽軒のお醤油入れなどが展示されています) 。

  

現在、企業向けということもあり中高生などの利用が活発であるとはいえない状況ですので、今後、中高生の利用も増やしたいと思ってらっしゃるようです。蔵書ももちろんですが、サイエンスカフェなどのイベントも、中高生にもおもしろい内容です。是非、お近くの中高生の皆さんは行ってみてはどうですか?

社史の蔵書も充実しています                 (講談社の社史もありました!)
社史の蔵書も充実しています                 (講談社の社史もありました!)

 

また、さらに今後、図書館としても、県立図書館という立場を踏まえ、専門性をもった活動をされたいとお考えです。もちろん、科学技術や産業の図書館としての専門性はありますが、司書さん一人一人も専門性を持ったスペシャリストになることを目指す必要があるのではないかとお考えです。

 

特に、社史の蔵書については、日本一くらいの充実ぶりですので、社史に関しては今後も力を入れて行きたいとお考えのようです。

 

最後に、インターンシップの実習で図書館に来ていた桶土井さんと斎藤さんから、お勧め本を紹介していただきました。

 

桶土井さんのお勧め本は、『ファー・アウト―銀河系から130億光年のかなたへ 』マイケル ベンソン (著), Michael Benson (原著), 檜垣 嗣子 (翻訳)、 『商品から学ぶ化学の基礎』 松田 勝彦 (著)、 『笑う科学 イグ・ノーベル賞』 志村 幸雄 (著)です。

ファー・アウト―銀河系から130億光年のかなたへ
ファー・アウト―銀河系から130億光年のかなたへ

 

 

 

 

『ファー・アウト―銀河系から130億光年のかなたへ』は、大型の宇宙写真集です。見ているだけでも宇宙のロマンを感じるもので、小さい子どもでも眺めているだけで楽しいのではないかということです。また、大型の写真集ということで図書館の蔵書ならではのお勧め本になっています。

商品から学ぶ化学の基礎
商品から学ぶ化学の基礎

 

 

また、高校時代に桶土井さんは、化学が苦手だったそうなのですが、この本があればもうちょっと好きになっていたかもしれないということでお勧めするのが『商品から学ぶ化学の基礎』です。この本を読むと、不思議なよくわからなことがなぜこうなっているかを化学基礎の知識として知ることができるそうです。また、参考書的にその単元に関連した問題もついており、かつその答えはHP上にしか載っていないため、学習的な効果も期待できるとのことです。このように、単に化学を勉強するだけでなく、商品と関連づけることで、化学への興味がわくようになっており、さらに、商品として、ヘアカラやマスカラといった女子にも身近な商品もありますので、女子にとっても化学の学習へ入りやすい本になっているのではということです。

     笑う科学 イグ・ノーベル賞
     笑う科学 イグ・ノーベル賞

 

『笑う科学 イグ・ノーベル賞』は、ノーベル賞はとてつもなく手の届かないような偉大な賞でありますが、イグ・ノーベル賞と比較することで、もっと身近に感じることができるのではないかということで、お勧めだそうです。また、本の中に、バニラの成分を牛のフンから抽出したおもしろい女性科学者の話が載っており、牛の飼料がもったいないという実体験が研究に結びついているということ、また、小さいころから気になったことを調べるという姿勢が科学者としての基礎になったということがわかり、女性が科学者になるとはどういうことかということが分かるのではということです。また、最後に、探究心をそそる「わからないこと」という部分もあり、わからないことを放っておかないことが大事であるという部分もあって、科学の入門書としてお勧めだそうです。

あっ、トトロの森だ!
あっ、トトロの森だ!

 

 

そして、斎藤さんのお勧めは、『あっ、トトロの森だ! 』工藤 直子 著と『砂糖の事典』です。まずは、本を手に取るには、タイトルのネーミングのインパクトが大事だと思っているので、この二冊をお勧めだそうです。

 

 

『あっ、トトロの森だ! 』は、自然保護に関するものですが、みんな自然を大事にということは分かっているのだが、そうはいっても結局は積極的に取り組むことができていないということは多い。そういった中で、「トトロの森」というところからこの本が目に留まり、この本を読むことで、自然保護について考えるきっかけになるのではと思いお勧めだそうです。

       砂糖の事典
       砂糖の事典

 

次に、お菓子を嫌いな女子はいないだろうということで「砂糖の事典」をお勧めいただきました。斉藤さんの友達の栄養士を目指すリケジョの人たちは、老人ホームで高齢者のために働きたいなどしっかりとした意思や夢を持っている人が多いそうですが、彼女たちも最初は料理が好き、食べるのが好きといった程度の趣味の域から出発しているそうです。何か自分の好きから、もっと極めたいということで専門的なものに進むことが大事だと思うので、そのイメージとしてこの『砂糖の事典』はちょうどよいのではということでお勧めだそうです。表紙もかわいくて手に取りやすいので、内容はかなり専門的ですが、好きから専門を知るということができるということです。

 

今回、川崎図書館にお伺いしてみて、川崎図書館は「本物に出会う図書館」といえるのではないかと思いました。様々なきっかけを創ってくださって、深い科学技術の世界への道しるべ、橋渡しをしてくれる図書館なのではないでしょうか。

 

お話を聞かせてくださった、科学情報課長の土屋さん、インターンの桶土井さん、斎藤さんありがとうございました!

 

■川崎図書館HP http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/index.html

 

■アクセス

 ・JR 川崎駅より徒歩15分

 ・京浜急行 京急川崎駅より徒歩15分

 ・川崎市営バス

   川04系統 市営埠頭行き

   川10系統 水江町行き

  「教育文化会館前」下車

 

■所在地・連絡先

 〒210-0011 川崎市川崎区富士見2-1-4  

 (代表)044-233-4537

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